過保護な彼にひとり占めされています。
「おはよーございまーす」
するとその時、フロアの入り口から聞こえた低い声。
それは間違いなく相葉のもので、ドキッと一気に心臓がうるさくなる。
よく聴き慣れたその声に、いつもなら『おはよう』と普通に返すけれど、今日は入り口側に背中を向けたままでいるしか出来ない。
ど、どうしよう……どんな顔、しよう。
いつもどうしていたっけ、相葉となにをどう話して、どこをみて話していたっけ。
普通がなんなのかすらわからなくなってきてしまった……!
「村本。おはよーって」
「わ!!」
いつも間に近付いてきていたのか知らないけれど、そんな私の気持ちなど露知らずの相葉はこちらを覗き込む。
いたって普通の顔で、なんてことなさそうな態度。
けれど、この距離感とほのかなフレグランスの匂いが昨夜のキスを思い出させて……。
「おっ、おはっ、おはっ〜……トイレ行ってくる!!!」
「は!?なんだその挨拶!!」
『おはよう』すらも言い切れず、逃げ出すようにフロアを飛び出した。
ふ、普通になんて出来ないよー!!
そもそも、どうして相葉は普通なの!?だって、昨日キスした相手だよ!?告白したんだよ!?
気まずさとか恥ずかしさとかっ……あぁもう!恥ずかしい!
みるみるうちに真っ赤になっていく頬に、私は頭を抱え廊下の端でしゃがみ込んだ。