過保護な彼にひとり占めされています。




「……って、おい。なんだこの距離感」



会社を出てきた私と相葉は、打ち合わせ場所であるクライアントの会社へ向かおうと渋谷の街の片隅を歩いていた。



が、相葉がそう足を止めてツッコミたくなるのもそのはず。

普通に、普通にと意識しながら、ぎこちない私の体は相葉から徐々に距離をとり、ついには普通に歩く相葉から後ろに5メートルほど距離を取って歩いていたのだから。



「べ、別に……普通じゃん?」

「なわけあるか!つい昨日まで肩並べて焼き鳥食ってた奴とは思えないほど遠いだろ!」

「昨日と今日じゃ状況が違うんだから仕方ないじゃん!」



一度は『普通』とごまかそうとしたけれど、普通でいられていないのは自分が一番よく分かっている。

それを認め反論した私に、相葉は呆れたように再度歩き出した。



「……つーか、そんな露骨に距離置かれたら、さすがに俺も傷付くんだけど」



う……確かに。告白をしてくれた相手にひどい振る舞いかもしれない。

そう思い、小走りで駆け寄ると、人ひとり分の距離を開けて相葉の隣を歩いた。



「……き、昨日の、なに?」

「なにって……そのままの意味。言っただろ、好きだって」



『好き』、繰り返すように言われる言葉にぴく、と耳が反応してしまう。



「う……うそ!今までそんなそぶりなかったじゃん!」

「そりゃそうだ。今まで可能性なんてないと思って隠してたんだから」



そうだったの!?

驚きながらも隣を歩くと、自然とその足は私の歩幅に合わせたペースで進んでいく。



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