過保護な彼にひとり占めされています。
「けど昨日、お前一瞬俺のこと意識しただろ。ってことは完全に脈なしってわけじゃないってことだ」
「うっ……」
確かに意識はした、けど……!
あの私の反応は、相葉からすれば思わぬチャンスだったのだろう。けど、でもあの意識はそういうことじゃなくて……とひとり心の中で言い訳をする。
目の前の赤信号に足を止めると、同じく足を止めた相葉はこちらへ視線を向けた。
「ってことで、これからは手加減しないから。ガンガン攻めさせてもらう」
しっかりと目を見て言い切るそのセリフに、つい顔を背けてごまかそうとしてしまう。
「そ、そんなのいきなり言われても……わかんないよ。相葉のこと、同期としてしか見たことないし」
すると相葉は、伸ばした手を私の顎にそっと添え、クイッと顔を相葉の方へと向けさせた。
その指先にはさほど力を込められているわけでもないのに、逃げることはできず簡単にその目に捕らえられてしまう。
「わかってるよ。だからこれから考えろ」
「え?」
「同期としてじゃなくて、ひとりの男として見て、考えてから答えを出せ。今のまま断られても踏ん切りつかないしな」
その目はとても真剣で、嘘や軽い気持ちで言っているようにはとても見えない。
視界の端で青に切り替わった信号に、周りの人々は一斉に動き出す。それにつられるように、相葉は私から手を離しまた歩き出した。
同期だからわからない、じゃなくて、ひとりの男として見て考える……。
……そんなこと、言われても。いきなり切り替えるなんて、出来ないよ。
大切、といえば大切だよ。
相葉は数少ない同じ部署の同期で、話だって面白いし、たまに優しいところだってあるし。
でも、昨日は珍しく近付いたからちょっとドキッとしてしまっただけで……異性としての好きなんて、そんな。
わかんない、よ。