過保護な彼にひとり占めされています。




「ではこちら、今回の企画書のほうになります」



やってきたクライアントの会社ビルにある応接室で、私たちは書類を広げ打ち合わせを行なっていた。



ふたり並んで座る私と相葉に、向かい合うのはクライアントであるショッピングモールの社員である50代くらいの男性2名。

スーツを着た男性ふたりは、再来月に行われる新たなビルのオープニングイベントの企画として、相葉の練ってきた企画書を数枚見比べた。



「今回オープンされる御社様のビルがファミリー向けのショッピングモールということで、ビル内のイベントスペースにて親子で参加出来る企画がいいと思いまして」

「そうだなぁ、だが親子参加型となるとクイズやスタンプラリーや、どれもありきたりというか……」



額にシワを寄せて「うーん」と悩む男性に、相葉はにこりと笑顔を見せて更にもう一枚用紙を取り出す。



「そうおっしゃられるかと思いまして、もうひとつ考えてきたんですよ。それが、この『くまどんを探せ』ゲーム!」



自信満々にテーブルに置かれたその紙には、くまの着ぐるみの写真が並んでおり、これが相葉の言う『くまどん』なのだろう。



「まぁ要するに店内を歩き回っているいろんな種類のくまの着ぐるみを探して、スタンプを集めて、全部集めたら景品を、という形のものです」

「おぉ!それなら館内も見て回ってもらえて、どんな店があるかも知ってもらえるかもしれないな!」

「はい。子供たちにはスタンプラリーのわくわく感と、保護者には店舗を知るきっかけを同時に与えられていいのではないかと」



言われてみれば、確かに。

隣で話を聞いている私も納得できてしまうそのはっきりとした狙いに、男性たちも先ほどの渋い顔つきから一転し、感心したように「うんうん」と頷いた。



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