過保護な彼にひとり占めされています。
「……すみません、テーブルに虫がいたので。つい力を込めすぎてしまって」
「む、虫?」
「えぇ、虫です」
嘘くさいし、本当に虫がいたとしてそこまで力を込める必要はないと思う。けれど虫だと言い張る相葉の言葉は、それ以上のこちらの追求を許さないくらいにしっかりと言い切る。
にこりと細められたその目は、そっと開かれ目の前のふたりを見た。
「それで、なんの話でしたっけ?」
「あ、いや……その、彼女がだな」
穏やかに問いかけるものの、威圧感のある低い声に男性たちはもごもごとどもる。
「あぁ、村本が今後御社様の担当になることはないですから。大丈夫ですよ」
「そ、そうか、なら……」
「彼女には彼女にあった仕事を任せますから。例えば、立場が低いからといびったりしないような取引先の担当とか、ね」
にこりと見せた笑顔。けれど釘をさすようなその言い方と、笑っていない目に、男性たちはそれ以上の言葉を呑み込み黙って書類へと視線を戻した。
庇って、くれた……?
なんで、そんな。いつものように意地悪く笑って、『そうだな』って一緒になって言うかと思っていたのに。
……そういうさりげない優しさ、ずるいと思う。
そんなふうにされたら、嬉しいって感じてしまうよ。