過保護な彼にひとり占めされています。



「……けど確かに、正論だよね。相葉は同じ時期に入って、どんどん企画通って、沢山イベント運営して成果出してるのに。……私は、なにも出来てない」



思い出すのは先ほどの、男性のひと言。



『君自身もあんまりみたいだしなぁ』



相葉は庇ってくれたけど、私自身がダメだからああやって言われてしまうんだ。

落ち込み呟くと、その手は突然私の頭をくしゃくしゃっと乱すように撫でた。



「アホ。誰かと比べてどうするんだよ」

「え?」

「さっきも言っただろ。村本には村本に合った仕事やペースがあるんだよ。今は学ぶことや悔しさを吸収する時で、それがバネになる時がきっと来る」



こちらを真っ直ぐに見つめて、言い切った。

『私には私の』、そう期待を込めて受け入れてくれる。今の私を否定しない。



「……本当?」

「本当」



そう迷いなく、自信を持って頷いてくれる。まるで、私より私のことを知っているかのようなその言葉に、込み上げるのは安心感。



嬉しい

相葉の言葉が、嬉しいよ。



「……うん、」



笑ってうなずいた私に、相葉の顔からは柔らかな笑みがこぼれた。



「やっぱりその顔だな。村本の笑顔が、一番好きだよ」



笑顔が、一番好き。

さりげなく言われたその言葉に、胸の奥がドキ、と音を立てた。





友情が、恋に変わる瞬間。

それはいつ、どんなタイミングで訪れるのだろうか。

そしてそれはいつの日か、私にも来るのかな。



この胸の音が、恋になるときが。







< 24 / 147 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop