過保護な彼にひとり占めされています。
青いデニムシャツに黒いズボン、と飾り気のない服装だけれどオシャレな雰囲気を漂わせている相葉は、理崎さんと書類を手に、身振り手振りでなにか説明をしている様子だ。
……真剣な、顔。
仕事中の、集中している時の顔つきだ。
入社してから3年。毎日のように顔を合わせて、真剣な顔も笑顔も散々見てきた。
だけど、気持ちを伝える時の眼差しはまた違う。
真剣でまっすぐで、どこか情熱的なその瞳は、初めて見る気がした。
って、仕事仕事……。
気を取り直し仕事を再開させようと、一度視線を手元の用紙へと戻す。けれどつい気になって、また相葉のいるほうを見た。
ところがそこには理崎さんしかおらず、一瞬にして相葉は消えていた。
あれ……どこか行った?
今の一瞬でどこに行ったんだろう……。そう思い辺りを見まわそうとした、その時。
「村本」
その低い声が耳もとでボソッと囁いた名前に、ドキッと心臓がはねる。
驚き声のほうを振り向けば、そこにはいつの間に背後にまわっていたのか相葉の姿があった。
「なっ!?ななっ……」
「こっち見てたみたいだから。なにか用かなーって」
触れそうなほど近い距離にただでさえドキドキとしてしまうのに、相葉のそのひと言から、自分がそちらを見ていたことを気づかれていたと知ると、恥ずかしさは増し一気に顔はかぁぁと赤くなる。
「なに、見惚れてた?」
「なっ!」
からかうような、意地悪な笑い方で問う。