過保護な彼にひとり占めされています。
「なっ……ふざけんな!無理に決まってるだろ!!」
「そうだそうだ!ただでさえ他の仕事だってあるのに……」
口を尖らせ不満を言う先輩たちに、名波さんは目をつり上げキッと睨む。
「そんなのわかってるわよ!けどそのクライアント、東郷さんはうちの社長の身内よ!?『出来ません』なんて言おうものなら、うちら全員どうなることか……!!」
名波さんのその言葉に全員の顔は青ざめ言葉は引っ込んだ。
そう、主催の子育て団体の代表者・東郷さんという女性は、うちの会社の社長の身内。依頼自体もそのコネで格安で受けたというのに……ここまでひどい態度をとられるなんて。
どうしよう、どうすれば、そうざわつく皆の中、理崎さんの溜息と低い声だけが響いた。
「……とりあえず、急ぎの仕事以外の奴は全員こっちの作業手伝ってくれ。名波と数名は安い店で景品買出し、残りは会場内の飾り作りと必要な物の最終チェック」
「はい!」
さすがというかなんというか、やる気がなさそうなハリのない声にもかかわらず、てきぱきとしたその指示に皆は一斉に動き始める。
それは隣にいた相葉も同じで、颯爽と歩き出し作業へと加わった。
「あとは……あ、村本。お前に頼みたいものがある」
「え?私ですか?」
小さく手招きをする理崎さんに、個人的に呼ばれたことに不思議に思いながらも近付くと、理崎さんは名波さんから書類を受け取りそれを私に見せた。
「当日会場入り口に大きめの看板を飾りたいっていう要望があってさ、それも作らなきゃいけないんだけど……村本、頼むわ」
「え!?」
「お前確かフライヤーとかPOPとか上手かっただろ。だから」
差し出されたその紙を見れば、それは看板についての指示書で、板の大きさや文字などどういったものをどれほど作ればいいかが書かれている。