過保護な彼にひとり占めされています。
「冗談だよ、冗談。ちゃんとお前も連れて行ってやるから」
そして私の頭をよしよしと撫でると、私のもとを歩き出す。
「相葉ー、ちょっと。今度の商品発表会の企画なんだけどさ……」
「はーい」
タイミングよく呼ばれた声に、フロアの端にいる先輩のもとへと向かうと、相葉はそれまでの素の顔から一転、真剣な顔で仕事の話を始めた。
いいなぁ、相葉は。自分がメインで担当の企画があって……。
「あっ、一花!よかった、ここにいた!」
そう羨むような目で見ていると、バタバタと足音を立てフロアへ入ってくるのは、黒く長い髪をひとつに束ねた背の高い女性。
白いワイシャツに赤いセーター、細身のスキニーデニムといった格好の彼女・先輩社員の名波さんは、ゴールドのフープピアスを揺らし急ぎ足でデスクへと向かい、書類をバサバサとかき集める。
「名波さん。どうかしたんですか?」
「15時からの予定だった打ち合わせ、1時間前倒しになったから!もう出るよ!早く!」
「えっ!?あっ、待ってくださいよー!」
そんな彼女からの突然の急ぎの指示に、私は慌ててコートと茶色いトートバッグを手に取ると、必要な書類を同じようにかき集めてフロアを走った。