過保護な彼にひとり占めされています。
踏み込んだ迷路の中は、壁ばかりで本当に複雑に入り組んでおり、迷路としては出口を探す楽しさがあるかもしれない。
けれど、薄暗さと不気味さがなんとも恐ろしく……私はビクビクとしながら迷路の中を歩いていく。
「な、なんか不気味だね……」
「そうか?暗いだけだろ」
相葉はこういったものが平気なほうらしく、平然とした顔でスタスタと歩く。
その足に置いていかれてしまわぬように、相葉の服の裾を小さく握った。相葉は気づいているのかいないのか、特になにを言うわけでもなく迷路の中を見渡す。
「やっぱ歩く途中途中になにかしらアクションがほしいなー。歩くだけだと感覚が麻痺する」
よくこの状況で仕事のこと考えられるなぁ……!
感心したように歩いていると、突然頭上からはプシューッ!とガスが噴き出した。
「ぎゃっ、ギャー!!!」
脅かすようなその音と感触に、驚きつい悲鳴をあげながら、私は相葉の腕にしがみつく。
「お前……驚きすぎ」
「だって、いきなり、プシューッって……びっくりしたぁぁ〜……」
半泣きの情けない声で、その太い腕から離れまいと抱きつく私に、相葉は呆れたように笑い、なにかに気付いたような反応をしたかと思えば私から目を逸らすように右側を見た。
「ん?どうかしたの?」
「いや、どうかっていうか……あー……」
「へ?」
言葉を濁そうとする相葉の態度がめずらしく、いっそう不思議に感じてしまう。
「……胸が、当たってる」
驚き怖がる事に必死で気付かなかったけれど、相葉の腕はよく見ればしがみつく私の体にしっかりとくっついており、それは私の胸にもあたっていて……。
「ご、ごめん!!ごめんなさい!!」
恥ずかしさと驚きに、私は両手をバッと上げ相葉から手を離した。
わ、私のバカ!なにしてるんだか!!
つい先ほどまでの怖がる気持ちはどこへやら。咄嗟にとはいえ自分のしたことに一気に恥ずかしくなってしまう。