過保護な彼にひとり占めされています。
「村本?どうかしたか?」
「……私って、さ。最低かな」
「は?」
あまりに唐突な『最低』のひと言に、その顔は意味がわからないというように眉間にシワを寄せた。
「今更なんだけどさ。相葉の気持ち知ってて、答えも出せなくて、だけどこれまで通りでいたいとは……思う」
つぶやいた素直な気持ち。それは、まだわからないままの、自分の気持ちだ。
その言葉に、相葉は拳で軽く私の頭を小突く。
「これまで通りいたいのは、俺も同じだよ」
「え……?」
相葉も、同じ?
見上げれば、相葉はじっと真っ直ぐに私を見つめる。
「告白した時点で、これまで通りじゃいられないのは覚悟のうちなんだよ。けど、それでも言いたいと思ったのは、俺のワガママ」
私の答えによっては、同期という関係にすら戻れない。それでも、勇気を出して、覚悟を決めて伝えてくれた。
「だけどそれでも、すぐ答えを出したりしないで考えてくれてるのは、ありがたいと思ってる。はっきり答えが出るまでは、こっちだって思い切り攻められるわけだし」
「な!」
そうからかうように言いながら、ふっと笑ってみせた。
「よし、行くか」
そう言って差し伸べられる手。それは、先ほどの暗闇の中と同じように、この心の距離を縮める。
わからない、よ。
相葉は友達。同期、だもん。
わからない、わからない。その言葉を言い訳のように繰り返して、今はまだこのまま、友達としてその隣を守っている。
そっとその大きな手を握ると、握り返してくれる力に、甘えながら。
心の奥ではまた小さく、胸が音を立てるのが聞こえた。