過保護な彼にひとり占めされています。
唇から
とある土曜日の午後。
今日も皆が打ち合わせやイベント準備、企画の仕事に励む中、雑務に追われる私はフロア内で掃除をしていた。
皆バタバタと忙しくてフロア掃除なんてする暇ないもんね。埃っぽいフロアもいやだし……。
そう思いながら、ハンディモップでササッと棚の上の埃をとる。
これが終わったら応接室も綺麗にして……あ、書類整理も頼まれていたんだった。
なにげなく目を向ければ、目の前には相葉のデスクがある。
きちんと揃えて置かれた書類が丁寧なその性格を表しているデスクの上、電源がついたままのパソコンの画面には『巨大迷路企画案』の文字。
「これってこの前の……?」
つい内容を見ると、そこには先日ふたりで行った巨大迷路を参考に、相葉の考えや企画が画像や図を添えてずらずらと書かれていた。
『ホラー的な要素はカップル受けもいいが、やりすぎには注意』……これ、絶対私のことだな。
確かに、距離が近づくにはいいかも。でもやりすぎると私みたいに絶叫して大騒ぎになるもんね。
でも、思い出がこうして形になるのは、嬉しいなぁ。
「あ、それこの前のデートの成果?」
「え!?」
突然背後からかけられた声に、驚き振り向く。
そこにいたのは先輩である男性社員・井幡さんで、大きめなレンズの黒縁メガネをかけた少し小太りの彼はニヤニヤと笑みを浮かべて私を見た。