過保護な彼にひとり占めされています。
「井幡さん……で、デートって、なにを」
「この前相葉とふたりで出かけたんだろ?ふたりで遊園地で迷路入って、チューでもしたか?」
「は!?」
井幡さんはひやかすように冗談半分に言うものの、以前相葉とキスしたことがある私からすればギクリとせずにはいられない。
彼はただ単純にからかっただけのようで、そんな私の動揺には全く気付くことなく笑う。
「って、さすがに同期に手出しはしないか!でも優しかっただろ、あいつ女の扱い慣れてるだろうしなぁ」
『女の扱いに慣れてる』、その言葉にピクリと耳が反応してしまう。
「そ、そうなんですか?」
「慣れてるだろー、だってあの顔だぞ?この前相葉とふたりで本社に行った時も、囲まれて声かけられて、超モテモテでさぁ。あれだけモテれば女なんて取っ替え引っ替えだろうなぁ」
その時の光景を思い出しているのか、羨ましそうに遠い目をする井幡さんのその話に、少し驚きながらも納得してしまう。
や、やっぱり……そうなんだ。分かってはいたけどさ。
相葉は、かっこいい顔をしているし、背も高く体も締まっている。少し長めの茶髪が爽やかで、服装だって清潔感にあふれているし……つまり、見た目は完璧だ。
それだけでも充分女性は寄ってくるだろう。けれど、それに加えて愛想もいいし口も上手い。尚更モテると思う。
……だから、こそ。相葉の『好きだ』という気持ちを素直に信じることは出来なくて、からかわれているのだろうかと疑ってしまう。
私じゃなくても、相手なんて探せばたくさんいるはず。
からかわれてる?ただの友達という私を落とせるか、試されている?
余計にその心の奥の本当の気持ちが分からなくなる。
「ん?村本どうかしたか?」
考え込み黙ってしまう私に、井幡さんは不思議そうに顔を覗き込んだ。