過保護な彼にひとり占めされています。
「楽しそう、なんて表面だけよ。心の中では皆全力なんだから」
「えっ、そうなんですか?」
「いかにいい男を見つけて、連絡先をゲットして次に繋げるか……30代の婚活は常に本気なのよ」
深刻な顔の名波さんの言葉に重みが感じられるのはおそらく、彼女自身も30代独身と参加女性たちの気持ちが分かるからだろう。
そんな会話の中、進行をしていた井幡さんは今のうちにひと休みといった様子でこちらへとはけてくる。
「あれ、相葉どこにいきました?確認したいことあったんですけど」
少し太めの体を重そうにキョロキョロと辺りを見渡す井幡さんに、そういえば相葉の姿が見えないことを思い出した。
昨日のあれから、気まずくて相葉の顔を見ることが出来なくて……わかりやすいくらい逃げてしまっているけれど。
「あー……相葉なら、ほら」
名波さんが苦笑いで視線を向けた先を見ると、そこには婚活パーティーに参加する人々の中、参加者の女性たちに囲まれる相葉の姿があった。
「お兄さんは参加しないんですかー?」
「いくつ?これもなにかの縁だし連絡先とか交換しませんか?」
「いえ、自分仕事中ですから……」
相葉は苦笑いで断るけれど、女性たちはキャーキャーと語尾にハートマークをつけて相葉にあれこれと声をかける。どさくさに腕や手に触れる人までいる。
……つまり、モテモテ状態だ。
「なんですかあれ……」
「企画者が参加者の人気を独占するっていう、男参加者泣かせの図よ……」
冷ややかな目で見る私に、名波さんは話す女性がおらず手持ち無沙汰となっている男性参加者を哀れむように遠い目をした。