過保護な彼にひとり占めされています。
「あ、ありがと……荷物は私持って行くから、戻ってていいよ」
その視線から逃げるように、背中を向けてトランクを開けると、ゆっくりと相葉が近付く足音がする。
「村本。お前、昨日からなんかおかしくないか?」
ギク、と鳴る胸の音を誤魔化すように、平常心を装った。
「そ、そう?普通でしょ」
「じゃあなんで目合わせないんだよ。すぐ逃げるし。俺なにかしたか?」
けれどそれも相葉にはお見通しのようで、背中を向けたままトランクに積まれた透明のケースを足元へ降ろす私を、逃すことなく問い詰める。
「べ……別に。私のことなんて気にしないで早く戻りなよ。女性たちも待ってるだろうし」
「は?」
「ていうかあれだけモテるなら私じゃなくてもいいんじゃない?よりどりみどりだろうし、私なんてからかってもなにも面白くないしさ」
はは、と笑えていない笑顔で言うと、不意に背中に近付く気配。詰め寄るような距離に、また心はドキ、と音を立てる。
「ちょっと相葉、近い……」
そしてその体を離そうと振り向きかけたその時、後部座席に手をついて追い込むような体勢をとる相葉に、私は驚きトランクの中に腰を下ろしてしまう。
「なにそれ、ヤキモチ?それとも、俺の気持ちはそんなに薄っぺらく見える?」
顔を近づけ問いかける声は、笑っていない、真剣なもの。
真っ直ぐに見つめる目には、戸惑う私の顔が映り込む。その目にまた逃げようとする私に、相葉は額を合わせ逃がさない。