過保護な彼にひとり占めされています。



……ていうか。

どうしてこの男は、こんなに普通の顔をしていられるの!?



だって、キスしたんだよ?二度目とはいえ……あんなにしっかり。まるで、恋人のような、キス。

感触を思い出すとボッと熱くなる顔に、誤魔化すように冷えたビールを飲んだ。



あれから数日が経っているにもかかわらず、思い出す度ドキドキとしてしまう。けれど、相葉はいつでも普通の顔で、私ひとりで照れたりしている気がして、なんだか複雑だ。



「ほら、村本も食えよ」



そんな私に、相葉はなにも気付いていないのかずいっと串焼きをひとつ差し出した。



「う、うん、ありがと……」



串に刺さったホタテの串焼きをぱくっと食べると、口の中に広がるのは醤油と甘いバターがほどよく混ざった味。

醤油のしょっぱさにホタテの甘さも際立って、こんがりとした焦げ目もおいしい。



「ん〜っ……おいしー!!」



その味にテーブルを叩きながら悶絶する私やに、相葉はその反応を予想していたかのように笑った。



「やばい、おいしすぎる……10本はいける……!」

「せっかく他にも種類あるんだからいろんな串焼き食えって」

「だって!おいしすぎるんだもん!」



そんなやりとりを見て、名波さんたちもおかしそうに笑う。



「いつも思うけど、相葉って本当に一花の美味しいツボを分かってるよねぇ」



確かに言われてみれば……相葉が勧めてくれるお店や食べ物は、いつも美味しい。

もともと私が食べるのが好きっていうのもあるけど、相葉が『食えよ』って差し出してくれるものはどれもすごく美味しいんだよね。



「村本、美味い物食った時の顔が超面白いから。その顔が見たくて、美味い物見つけたら食わせてやりたくなるんすよ」



目の前のもつ鍋を器によそりながら普通の顔で言う相葉のひと言に、ついドキ、と反応してしまう。



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