過保護な彼にひとり占めされています。
『その顔が見たくて』
私の顔がおもしろいから、って言われているのに。嬉しいと思えてしまう自分がいる。
ちょっとしたひと言で、素の顔にさせたり、ドキッとさせたりするから、困るよ。
そんな私に、こちらの気持ちを一切知ることなく井幡さんが笑って言う。
「お前ら本当仲良いなぁ。村本ー、そうやって相葉とばっかりつるんでるからいつまでも彼氏が出来ないんだぞー?」
「うっ……」
そのひと言はグサリと痛いところを刺す。
「確かに……一花から相葉以外の男の話って聞かないもんねぇ」
「そりゃあ、話そうにももうかれこれ3年近く彼氏なんていませんから……」
名波さんの言葉に、せっかくのホタテの串焼きを食べる顔も苦笑いになってしまう。
「3年……ってことは、入社した頃はいたのか」
ぼそ、とつぶやかれた理崎さんの気怠げな声に、食べ終えた串を皿に置きうなずいた。
「大学の頃から半年くらい付き合った相手がいたんですけど……私が仕事と恋愛を上手く両立できなくて」
「あー……村本らしいといえばらしいな」
理崎さんの言葉に、否定や反論すらもできない。
同じ歳で、同じように就職をした元カレ。けれど私だけが仕事で手一杯で、相手のことを思いやったりふたりの時間をつくる余裕がなくなってしまった。
以来恋愛からすっかり遠ざかっていたものだから、今の相葉との関係に尚更戸惑ってしまうわけだ。
「へー、あ、じゃあ好きなタイプは?周りにいれば紹介してやるよ」
「へ!?いや、あの……」
もつ鍋をよそりながら言う井幡さんからの提案は、有難いもの。けど、好みのタイプって……ここで相葉と正反対のことはいいづらい。けど、相葉がタイプかのような言い方をするのも微妙。
けど、でも、うーんと……。
「っ〜……内緒です!トイレ行ってきます!!」
ここは逃げるに限る、とでも言うように席を立ち、店内奥にあるトイレへと向かった。