過保護な彼にひとり占めされています。
「理崎さん、それセクハラっすよ」
「笑えないからやめろ」
理崎さんは相葉の言葉にパッと手を離すと、そのまま席へ向かい歩いていく。がやがやとしたその場には私と相葉のふたりだけが残された。
「セクハラって……助けてくれたのに」
そんな言い方しなくても、とつぶやく私にこちらを見た相葉の顔はまだ少し不満そうだ。
「セクハラだろ。後輩にベタベタ触ったりして」
「そういう言い方しないの。男の人たちに絡まれてたところで理崎さんが助けてくれたんだから。かっこいいよね、スマートで大人の男って感じで」
あはは、と笑って言うと、その表情が一瞬固まったように見えた。
「……そうだな」
そしてそうそっけなく言うと、相葉はトイレのある方向に向かおうと歩き出そうとしてしまう。
あれ、相葉……なんか様子、変?
「相葉?どうかしたの?」
そっけない態度に様子をうかがおうとするものの、相葉は前を向いたままこちらを見ることはない。
「別に。普通だけど」
「普通じゃないじゃん、いきなりどうしたの?」
普通と呼ぶにはあまりにもつんけんとしたその態度で去ろうとした相葉に、私は思わず引き止めようとその腕を掴んだ。
けれど、それは一瞬にして思い切り払われてしまう。
拒むようなその腕に驚き言葉を失う私に、相葉はふと我に返ったように声を漏らす。
「あ……悪い、」
今まで自ら触れていた彼の初めての拒絶に、心はズキ、と音を立て、私は払われた手を引っ込めた。
「……そんな態度しなくても、いいじゃんか」
「村本……」
「相葉のバーカ!もう知らない!」
そしてそんな子供のような捨て台詞とともに、私はその場を後にした。
なにに怒ってるんだか知らないけど……手を払ったりそっけなくしたり、そんな態度しなくてもいいじゃんか。
好きだって言ってキスをしたと思えば、こうして拒んだりするから。余計相葉のことが分からなくなる。
……だけど、たったこれだけのことにこんなにも傷ついてる自分も、意味がわからない。