過保護な彼にひとり占めされています。
それから私と相葉はぎこちなく……話を振られれば普通を装って会話もしたけれど、いつものようにふたりで会話をすることはなかった。
微妙な空気の変化に理崎さんはなにかを感じ取った様子だったけれど、何も気づかぬ名波さんのにぎやかに助けられるように盛り上がり、夜を過ごしたのだった。
そしてそのまま迎えた翌日。
「……村本、おはよ」
いつも通り物がごちゃごちゃと多いオフィスで、少しぎこちなさを漂わせながらも相葉は出勤してきた私へ声をかけた。
それは昨夜のことをなかったことにしたいのか、仲直りのきっかけにしようとしているかはわからない。
けれどまだ気持ちがおさまらない私は、フンッと思い切り顔を背けて自分のデスクへと向かった。
昨日は自分から人の腕払ったくせに……一晩経ったら普通にしようとするって、どういうこと!?
最初はあのそっけない態度の意味が分からず戸惑い落ち込みもした。けれど時間とともにその気持ちは怒りへと変わり……。
とてもじゃないけれど、普通に接することなんて出来ない。
ていうか昨日、なんでいきなり機嫌悪くなったんだろう。
私なにかした?怒られるようなことした覚えもないんだけど……。考えても考えても分からず、余計に理解に悩む。
「いちか〜……おはよ〜……」
すると、背後から聞こえたのは生気のない掠れた声。振り向くとそこには、顔を真っ青にさせた名波さんがいた。
よほど余裕がなかったのか、化粧もせず、髪もほどいたままだ。
「名波さん。おはようございます、また二日酔いですか?」
「そーなの……昨日あのあと、理崎と井幡を付き合わせて飲むうちに、気付いたら朝まで飲んでて……」
名波さんは正直、酒癖が悪い。酔うと誰彼構わず絡み、自分が潰れるまでなかなか帰さないし、おまけに残りやすいから翌日こうして二日酔いになっていることもよくあるといえばあることだ。
特に理崎さんや井幡さんと飲みに行くと長くなりがちなんだよね……。
昨日私と相葉は逃げるように帰ったけれど、ちらりと見ればデスクでは井幡さんがぐったりと伏せている。