過保護な彼にひとり占めされています。
そして、やってきた駅前の喫茶店。朝10時ということで若干空いている店内で私を待ち受けていたのは、スーツ姿の30代くらいの男性だった。
「初めまして、山野フーズの松永です」
コーヒーがふたつ置かれたテーブルを前に、松永と名乗る彼は、パーマのかかった茶色い髪を揺らし笑顔を見せた。
「スーパーノヴァの村本です。本日は新担当の名波が体調不良で来られないため、代理で参りました」
「村本さん、ね。いやぁ、かわいい人で嬉しいなぁ。代理と言わず正式に担当になってもらいたいよ」
交換した名刺をまじまじと見て、目尻を下げて笑う松永さんは、少し馴れ馴れしさも感じるものの、どちらかといえばいい人そうだ。
よかった、優しそうだしなんとかなりそう……。安心感にほっと胸を撫で下ろす。
「それでは、今回の依頼の件ですが……」
「仕事の話はもっとお互いに打ち解けてからにしようよ。ね」
へ?
打ち解けるって……どういうこと?
その意味がわからずきょとんとした私に、名刺をしまったその手は突然私の手をぎゅっと握る。
この手の意味は、えーと、打ち解ける、という意味で……。
「彼氏いる?いない?どっちでもいっか、俺キミみたいなかわいい系タイプなんだよね〜」
「え!?いや、あの……」
「連絡先交換しようよ。そしたら今度は個人的に会いたいなぁ」
こ、これはまさか、つまり……口説かれている!?
初対面なうえに会って早々に仕事相手にこうも馴れ馴れしく、手に触れて連絡先を求めるなんて……なんなの!?社会人としてどうなの!?
予想もしていなかったことに、驚き言葉に詰まってしまう。