過保護な彼にひとり占めされています。
「あ、あー……あっ!電話だ!ちょっと失礼!」
そして鳴った気配のない携帯をわざとらしくとり、「うんうん、あー!はいはい!」と誰かと会話をするように頷き電話を切った。
「申し訳ない!急遽どうしても会社に戻らなきゃいけなくなって……打ち合わせはまた後日!失礼しまーす!」
「えっ、松永さん!?」
一方的に話を終わらせると、彼は鞄を手にバタバタと席をあとにする。
嵐のようにあっという間に去って行った彼に、その場に私はぽかんとしたまま取り残された。
「な、なにあの人……」
「ったく、ナンパ野郎が。お前もなに気安く手握らせてんだ!このバカ!」
松永さんがいなくなった途端、こちらへ向けられるその怒り。突然の相葉の登場に驚く半面、『バカ』の言葉にカチンとしてしまう。
「バカって……いきなり来てなによその言い草!だいたい相葉には関係ないじゃん!」
「はぁ!?助けてやったのになんだその態度!俺がいなかったら今頃お前連絡先交換するはめになってたんだぞ!?」
「うっ……」
それを言われると、確かに……。
反論出来ず言葉を飲み込む私に、相葉は呆れたようにため息をつくと、テーブルのうえに置かれていた伝票を手に取る。
「会社戻るぞ」
「えっ、あっ、うん!」
こちらへ背中を向け歩き出すその姿に、いそいで鞄を手にとり後を追いかけた。