過保護な彼にひとり占めされています。
イベントプランナーとして就職して、3年。企画を考えイベントに動き回る、そんな毎日を過ごしている。
仕事は苦労ももちろんあるけれど、まぁ楽しいし、会社の人たちともそれなりに上手くいっている。そこそこ順調な日々だ。
そんな中、唯一上手くいかないのが……恋愛面。
「あ。相葉、おはよー」
改札を通り会社への道のりを歩いていると、背後からかけられた声。
それに振り向くと、そこにいたのは肩ほどまでの茶色いボブヘアを揺らす、俺より20センチ以上は低いだろう女子・村本だ。
紺色のコートに、黒いタイツとヒールの低いショートブーツ。下に着込んだ赤いニットのワンピースの丈が少し長めに感じるところがまた、その体を小柄に見せる。
「おはよ。今日いつもよりちょっと遅いのな」
自然と隣に並ぶと、その小さな歩幅に合わせるようにスピードを緩めた。
「うん、ちょっと寝坊しちゃって」
「あー、だからか。頭の後ろ寝癖ついてる」
「え!」
後頭部のあたりでぴょんとはねた髪を笑って整えると、その顔は少し恥ずかしそうに俺を見た。
……くそ、かわいい。
その無意識にちょっと上目遣いになる丸い目とか、すぐ赤らむ頬とか、いちいちこの心をドキッとさせるから困る。
だらしなくにやけそうになる顔をぐっと堪え、会社までの道のりを村本と並んで歩いた。