過保護な彼にひとり占めされています。
「喧嘩してたろ。飲みに行った時」
「気付いてたんですか……」
「あれだけ微妙な空気なら分かるだろ。気付かないのなんて鈍い名波と単純な井幡くらい」
名波さんと井幡さんは気付いてないのか。……あの時飲みに行ったメンバーが名波さんたちでよかった。
からかうでも笑うでもなく、理崎さんは言うと眠たそうにあくびをひとつこぼす。
「仲直りっていうか……喧嘩っていう喧嘩してたわけでもないっすけど」
「あー……どうせあれだろ。嫉妬」
『嫉妬』、そのひと言に心はギク、と音をたてた。
……なんでもお見通し、ってとこか。
理崎さんは喧嘩の理由どころか、俺の村本に対しての気持ちすらも分かっている前提で言う。
こういう冷静で、あれもこれも見透かしてしまうところがまた余裕を感じさせ、村本の『かっこいい』『大人』という言葉を思い出す。
そんな理崎さんに対し『違う』とか『なんの話っすか』ととぼけるのは一層かっこ悪い気がして、俺は横目で周囲に人がいないことを確認してから小さくつぶやいた。
「……そりゃあ妬きますよ。好きな奴に他の男のこと褒められたら」
「ガキかよ。別になんとも思ってなくても褒めるくらいするだろ」
ガキ。たしかにそう。
分かってる。理崎さんが村本の肩を抱いていたのも偶然、むしろ村本を助けるため。村本のあの言葉だって、本人はただ純粋に思った言葉をこぼしただけ。
けど、それを流せないくらいこの心に余裕がないのも事実。