過保護な彼にひとり占めされています。
「どうせ私の気持ちなんて、敏腕イベントプランナーの相葉サンにはわからないですよ……」
「いやぁ、それほどでも」
「褒めてない!嫌味だから!」
口を尖らせて見れば、隣で焼き鳥をひと口食べるその顔はふふんと笑った。
「まぁまぁ、そんな顔してたらせっかくの焼き鳥がマズくなるぞ?」
「顔と焼き鳥の味は関係な……むがっ」
言いかけたところに、言葉を塞ぐように口に押し込まれたのは相葉の手元のお皿にあった手羽先。
タレのついたこんがりと焼けた肉の味が口に広がり、なんとも絶妙……。
「っ〜……おいしい!なにこれ!」
その味に一気に顔がほころぶ私に、相葉も笑顔を見せた。
「だろ?ここの手羽先超美味いんだって。あ、名波さんもどうすか」
「ありがと。おいしそ〜」
相葉に勧められ手羽先を手にする名波さんと、ばくばくとかじりつけば、あふれるタレと肉汁に、ビールがさらに進む。
「ん〜……最高!ビールがおいしいー!」
「そりゃよかった……ってお前、服にタレこぼれてる」
「えっ!」
言われて見れば、私の白いニットのちょうどお腹の辺りには、手羽先のタレが一滴茶色く滲んでしまっている。
相葉はそれに気付くと、手早くおしぼりでトントンとシミ抜きをした。
「わ、ごめん。ありがと」
「ったく、子供かよ。口の周りにも油ついてるぞ」
そのままついでに、というかのようにそのおしぼりで私の口元を拭くその手に、私は骨だけになった手羽先をお皿に置きされるがまま。
そんな私たちを見て、目の前の名波さんは「ふふっ」と笑った。