過保護な彼にひとり占めされています。
「昼休憩行ってきまーす」
フロア内の掛け時計が12の数字を指す頃。迎えた昼休憩の時間に、フロア内でまだ仕事をする社員に声をかけると、俺はオフィスである建物を出た。
この近くには、昼食選びには困らない程度にいくつかの飲食店がある。
大手チェーン店や軽食のあるカフェ、安めの定食屋、ラーメン屋……たまにコンビニで買って済ませることもあるけれど、こうして外食に出ることがほとんどだ。
なに食うかな、よく行く定食屋にしようか……あ、そういえば向こうの通りに新しい店がオープンしたって誰かが言っていた気がする。
どんな感じか、一回行ってみようか。
あの店が美味いとか、この店のあれがいいとか、美味いものを探したり新規開拓をするのが結構好きだ。
といっても、俺が好きなのは美味いものを食べることではなく、村本を誘う口実ができるという意味で。
一緒に食事に行きたくとも、ただの同期の俺では誘うにも理由がいるから。
『ん〜!おいしー!』
それに、そう言って嬉しそうに笑う顔が見たくて、村本が好みそうなメニューを探す日々。
こうしてみると、つくづくあいつ中心な生活だな……。呆れて苦笑いがこぼれるものの、そんな日々が嫌いじゃないと思えてしまう自分もいる。
歩いていると、通りの端にひとつの姿があることに気付いた。