過保護な彼にひとり占めされています。
「……あれ」
紺色のコートを着たその小柄な姿は、村本。そういえば村本も俺より先に昼食に出ていた気がする。
村本は道の端で足を止め誰かと話をしているようだ。見れば相手は男で、30代くらいだろうか。スーツを着て営業マンのような身なりをしている。
知り合いか……?
雰囲気から見て友達ではなさそうだ。友達ではない男の知り合い、となると当然気になってしまうもので、つい遠目から様子をうかがってしまう。
「……という会社でして、世の中の女性の美のためを思って日々研究を重ねている化粧品会社なんですよ」
「へぇ……すごいんですね」
「つきましては、そのためのご意見をお聞かせ願いたくてですね、この近くのビルでアンケートの方を取らせていただきたいのですが……」
……ん?
待て、待て待て。
どうにも胡散臭い言い方に、ビルで、アンケート……どう見てもそれ、キャッチセールスだろ!!
心の中で思い切り突っ込む俺の一方で、村本は男に苦笑いを見せる。
「あの、でも今ちょっと時間がなくて……」
「すぐ終わりますから!少しでいいので!ね!行きましょう!」
村本自身もキャッチセールスだとどことなく感じとっているのだろう。それとなく断ろうとしているものの、男は引くことなく村本の体を先にあるビルの方へと向けさせる。
このままじゃビルに連れ込まれる。アンケートから始まって、絶対変なもの売りつけられる。
この前のナンパ男の時と同じように、断りきれず契約書にサインする図が想像つく……!!
「っ……たく」
あぁもう、仕方がない。
俺はそう急ぎ足で近付くと男と村本の間を遮るように入り込んだ。