過保護な彼にひとり占めされています。
譲れない
12月になり、街の至る所がクリスマスの飾りで彩られる頃。
いっそう増す寒さとともに、忙しい季節を迎えようとしているオフィスにはどこか忙しない空気が漂っていた。
「今月は半ばから予定がぎっしりだなぁ……」
壁に掲示されたカレンダーに書き込まれたスケジュールを確認しながら、思わず声がもれる。
クリスマス前から年末年始、と土日はもちろん、平日にもぎっしりと詰まっているイベントの予定たち。相変わらず自分が企画したものはないけれど……準備や進行など、やることはたくさんだ。
「一花、この書類各10枚ずつコピーしてくれる?そしたら原本を本社にファックスで」
「あっ、はい」
声をかけながらこちらへとやってくる名波さんから、原本である紙を受け取ると何気なしに目を通す。
それはいくつかの企画書で、その中の一枚に『山野フーズイベント企画』の文字が見えた。
「山野フーズって……この前の、ですか?」
「うん。結局井幡が担当になってさ、うちら女性陣はイベント当日すらもこの案件には関わらないようにって」
「徹底してますねぇ……」
山野フーズの担当……松永さんといえば、先日打ち合わせの際にとても積極的に連絡先を交換しようとしていた人だ。
会社に戻ってから相葉が理崎さんに事情を話してくれて、結局私も名波さんも担当を外れることはもちろん、打ち合わせの付き添いすらも行かないようにと通達が出たのだった。