過保護な彼にひとり占めされています。



「弘臣に連絡しようとしたら連絡取れなくなっちゃってるんだもん。皆『弘臣が音信不通だ』って大騒ぎだよ」

「あー、何年か前にスマホ壊れて連絡先全部飛んじゃってさ。その時に番号も変えたから」



親しげに話すと、成宮さんは「もー」と口を尖らせながら相葉の胸元をトン、と叩く。

自然と体に触れるその手に、心の奥がモヤッとした。



……って、モヤッとする意味がわかんない。別に、相葉が同級生と仲よくても関係ないし。どっちでもいいし。



「楽しそうなところ悪いけど、成宮さん、向こうで打ち合わせ」

「あっ、はーい!すみません!」



理崎さんはそれまでドアの方から黙って見ていたものの、そのままだと長くなりそうだと判断したのだろう。

かけられた声に成宮さんは慌てて理崎さんの元へ戻り、隣の応接室に向かって行った。



その場に私たちだけとなった途端、井幡さんはニヤリと笑みを浮かべて相葉を肘で小突く。



「おいおい相葉〜、あんな美人と知り合いなんて羨ましいな〜」

「ただの友達っすよ」

「いや、あの親密さは元カノじゃないのか?付き合ってなくても一回くらいヤッたことあるだろ〜」



井幡さんの下衆な勘ぐりに、相葉は「なっ!?」と声をあげた。

『元カノ』、『一回くらい』、その言葉がモヤモヤとした心にチクチクと刺さる。



「ち、違いますよ!本当ただの友達で……」

「えー?でもこうして再会したことで、愛が芽生えちゃったりとかして……うらやましいなぁ、オイ!」



井幡さんの言葉に、皆も「おぉー!」と冷やかすように盛り上げる。

相葉は否定するけれど、寄り添うふたりを一瞬想像しただけでも余計に心は痛く、ぎゅっと唇を噛んだ。



「……私、お茶淹れてきます」

「あっ、村本!」



その苦しさから逃げるように、フロアを出る私に相葉が名前を呼ぶものの、聞こえないふりでその場をあとにした。





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