過保護な彼にひとり占めされています。
「一花と相葉って、本当仲良いよねぇ」
「そりゃあ数少ない同期ですから」
からかうような、本当に感心するような、どちらともとれるその言い方に、私は否定せず頷く。
「同期でも男女でそこまで仲良いのなんて……あ、同期といえば。本社に行った吉田さん、結婚するんだって」
「えっ!そうなんですか!?」
名波さんが思い出したように言った吉田さん、というのは、私と相葉と同期に入社した同じ歳の女の子。
最初はこのイベント企画部にいたものの、わずか一週間で人員の都合で本社に異動となった子だ。
たまに連絡をとる程度には仲は良かったけれど……そっか、結婚かぁ。
「相手が大手企業の御曹司だとかで、ハワイで挙式して、新婚旅行はパリだって。いいよねぇ〜」
「ハワイもパリも羨ましいけど……なにより“結婚”ってこと自体が一番羨ましいですよねぇ」
『結婚』、その言葉を羨ましそうに言う女ふたりに、相葉はあまり興味なさそうに焼き鳥へと手を伸ばしながら問いかける。
「あれ、でも名波さんって彼氏いたんじゃ?」
「いるけど、だからって結婚出来るとは限らないのよ……何年付き合っても話題のひとつも出やしない」
はぁ、と深い溜息には、名波さんカップルの何やら深い事情があるのだろう。
そうだよね、付き合っているからって必ずしも結婚って運びになるとは限らない……って、まぁ、そもそも彼氏すらもいない私には縁の遠い話なのだけれど。
思えば就職したての頃は半年くらい付き合ってた彼氏がいたけど、仕事で手一杯な私には恋愛する余裕なんてなくて、それで結局別れたきり。
以来まともに恋なんて出来てないんだよね……。
恋愛しなくても寂しさを感じないくらい日々が充実しているって証拠なんだろうけど、それはそれで、まずい気もする。
けど今、仕事ですらロクに出来ない自分に、相手を見つけて恋をして……なんて、きっと出来ないとも思う。
名波さんに続くように、私も「はぁ、」と溜息をこぼし、焼き鳥へと手を伸ばした。