過保護な彼にひとり占めされています。
「折角再会できたんだし、ちゃんと連絡先交換しておくんだよ?もしかしたらそこから恋に発展するかもしれないし……」
あぁ、嫌な言い方。
嘘だろうと本当だろうと、自分を『好き』と言ってくれている人に対して、最低な言い方。
分かっているのに言ってしまう。心の奥の黒いモヤモヤとした気持ちが、止まらない。
なんで、どうして、止まらないの。
そんな困惑を隠すように、白いカップを用意するフリをして相葉から顔を背けたままでいると、不意に背中に近づく気配。
それを感じた瞬間、カップを持つ手を包むようにその手がそっと触れた。
突然のその感触につい顔を上げると、目の前には相葉の顔が迫る。
「……本当、何回言ったら信じてくれるんだか」
嫌な言い方をした私の胸の内など分かりきっているかのように、相葉は怒るでもなく呆れたように小さく笑う。
「は、離してよ。コーヒー淹れられない」
「やだ。ていうか、村本本当に勘違いしてない?俺と翠、ただの友達だからな?」
拒むようにその手を払おうとするものの、より強く力は込められる。
「別にどっちでもいいし。私には関係ないもん」
「俺からすれば関係なくない。誤解とか、されたくないんだよ。周りからいくら冷やかされても、俺は村本のことしか見てない」
真っ直ぐな目でそう言い切ると、ゆっくりと近づく顔。
重なる手のごつごつとした感触に、ふわりと漂う微かな香水の匂い。ドキ、ドキ、と鳴る胸に、次の感触を想像した。
けれど、その唇は私の唇ではなく額にそっと触れた。
前髪の隙間から、額に確かに感じた柔らかさ。そのキスに目の前を見れば、微笑む相葉は空いた左手で抱き寄せるように私の背中に腕を回す。