過保護な彼にひとり占めされています。



「あっ、弘臣いた!」



ところがその時、ガチャッと開けられたドアと共に聞こえた声は、先ほど聞いたばかりのもの。

相葉の体を避け見れば、そこにいたのは成宮さんだった。



って、まずい!見られた!!

つい急いで体を離す私に、相葉はいたって普通に彼女のほうを振り向く。



「翠。なに?」

「理崎さんが呼んでるよ。ついでにトイレどこ?」



にこにこと笑う彼女は、トイレに行くついでに相葉を探しに来たのだろう。初めて来たオフィスで、物怖じせず慣れた様子で動けるのはすごい。



「わかった、今行く。トイレは一階」



そう答えて相葉は私の頭をくしゃっと撫で、給湯室を去って行った。

その場には、私と動き続けるコーヒーメーカー、そして成宮さんが残される。



き、気まずい……。

成宮さんとふたりきりというのもそうだけれど、さっきの相葉との……見られたよね?



どうしよう、なんて言うべき?付き合ってるわけじゃないんです、って弁解しておくべき?いや、でもわざわざ自分から言うと嘘くさい?

あぁもう、どうしたらいいかわからないよ!とりあえず早くコーヒー淹れてここを出よう!



そう思い、白いカップふたつにドリップを終えたコーヒーを注ぐと、濃い匂いがふわりと香った。



「あ、それ応接室に持っていくコーヒー?じゃあ私トイレ行く前に持って行ってあげるよ」



すると不意にかけられた声に、彼女のほうを見ると、入り口に立つ成宮さんは笑顔で私を見る。


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