過保護な彼にひとり占めされています。
「……はぁ、」
わいわいとにぎやかに話す皆の中、気付かれないほど小さなため息をひとつこぼした。
すると、ちょうど私の背後を通ろうとした人の肩が背中にドンッとぶつかってしまう。
「わっ」
「あっ、ごめん」
その衝撃につい前のめりになる体に、私は咄嗟に目の前の台に手をついた。
ところが、手をついたそれは肉をジュウジュウと焼く熱い鉄板で……。瞬間、しっかりと触れた右の手のひらに伝う熱さ。
「っ〜……」
込み上げてくるじんじんとした感覚に、声にならない声をあげる。そんな私の反応に、ぶつかった相手である経理部の男性社員は驚いた様子でこちらを見た。
「ご、ごめん!大丈夫!?」
その声に周りにいた皆の視線もこちらへ向き、和やかなムードが一気にざわつく。
熱い、痛い、けど……ここで騒いだら大事になっちゃいそう。そんな思いから声をぐっと堪え、私は笑顔を作ってみせた。
「あっ、大丈夫です!思ったより熱くなくて……」
「は!?マジ!?鉄板超熱いよ!?」
「あはは、私手の皮厚いので」
笑って誤魔化す私に、彼は少しほっとした顔をする。
「でも一応冷やしてきた方がいいんじゃない?赤くなってる」
そして彼の手は私の右手をそっと掴むと、赤くなった手のひらをまじまじと見た。
その時、私の手を奪うようにとった手。
「わっ」
見ればそれは、先ほどまで離れた位置にいた相葉の手で、驚く私をぐいっと引っ張り歩き出す。
「あっ、相葉!?」
「冷やしに行くぞ。来い」
「えっ、ちょっと待って……」
あまりにも突然の相葉の行動に、周りの皆は呆気にとられたように私たちを見る。そんな視線を気にとめることもなく、相葉はズカズカと歩き続けた。