Beautiful tears*
そのまま近づいてきて、私ではなく後ろにいる男を睨んで立ち止まった。
『他の女といるってどういうこと!!!ちゃんと説明してよ!?』
ちょっと待て。
横に並んで歩いてるわけでもないのに、私とこの男が一緒に帰ってると思ったの?
意味が分からなくて、隣で立ち止まってる女を見ると、向こうも私を見ているみたいで。
というか睨まれてて。
『ねぇ!あなた要とどういう関係なの!?』
『おい。こいつは関係ねぇよ。』
今になってやっと割って入ってきた張本人。
そのまま二人の言い合いが始まり、これ以上巻き込まれたくないので失礼することにした。
馬鹿馬鹿しい。
ああいう面倒くさいことに巻き込まれるの苦手なのよね。
『待て!』
焦ったような声と共に、肩に手が置かれて
反射的に振り払った。
「ちょっと!なによ!?」
『急に帰るから焦った。』
「帰るのにあなたの許可がいるわけ?」
『そうじゃなくて。お前に謝ってなかっただろ。』
そう言うとペコッと頭を下げた男。
一瞬なんの真似か分からなかった。
『巻き込んで悪かった。』
「...あぁ。別にいいけど。」
『俺、道長 要(ミチナガ カナメ)!よろしくな!レイナ!』
「なんで私の名前知ってるの?」
『同じクラスだろ?』
同じクラスだと名前も知ってるものなの?
もしかしたら、私だけかもしれない。
誰一人、この学校の生徒の名前を知らなかったのは。