Beautiful tears*
明らかに家とは違う方向に歩き出す奴は、一人でずっと喋っていて。
「ねぇ。どこ行くのよ?」
『うん?街。』
ただそれだけ答えると、スタスタと歩き続ける。
『腹減ったな。飯でも食うか!』
カナメがここだと言ったのは、Barと書いてあって。
時間的にも開いてないだろうに、なんのためらいもなくドアを開ける。
そのまま奥に入っていくと明かりのついたカウンターに男の人が立っていて、なにやら食器を洗っていた。
『ヨウスケさん!お久しぶりです!』
『おぉ!久しぶりだな!今日は彼女連れか?』
『あぁ、残念。レイナは友達っすよ。』
何が残念なんだか。
カウンター席に座ると、ヨウスケさんはニコッと微笑んでくれて。
『レイナ!何食べたい?』
「お腹空いてない。」
『でもなんか食べないと腹減るぞ?』
うーん、と悩んだ後なにやら頼んだみたいで
しばらくして出てきたのはオムライス。
大きいのが一つと小さいのが一つ。
その小さい方を私の方へ持ってきて、手で食べろと合図をしてきた。
仕方なく口に運ぶと、驚くほど美味しくて。
ちょっと戸惑った。
『ははは。美味いだろ?ヨウスケさんのオムライス。』
たしかに美味しくて、自分では考えられないほど
あっという間に食べてしまった。