いつか晴れた日に
 
棚からマグカップを二つ取り出して、インスタントコーヒーをスプーンで掬う。
無心でいようと努めるのに、どうしても涙で視界が滲んでしまう。

涼が涼じゃないなんて……。

「安西さん」

「……!!」

涼の声に、滲んだ涙を慌てて拭った。
泣き顔をなんて見られたら、益々変な女だと思われてしまう。

「あの、コーヒーはブラックですか?」

必死で言葉を吐き出すけれど、自分の震えた声にまた涙が滲んだ。
泣いちゃダメだ。そう思うのに、堪えきれない。

「……ぅっ」

嗚咽で肩が上がった。

涼がいなくなってしまった寂しさと不誠実な池永さんに対しての怒り。そして、唯一の友達を失くしてしまったの喪失感、それらが一気に押し寄せてくる。

「……ぅ」嗚咽と共に、また肩が上がる。

黒崎くんが困っているのが雰囲気で伝わるのに、自分ではどうすることも出来なかった。

出来れば席に戻って欲しい。
お願い黒崎くん。少しだけ一人にして。

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