いつか晴れた日に
一週間の教育係りも今日が最終日。

あれから、プライベートな話をすることも無く、淡々と業務を進めていくだけの毎日だった。
黒崎くんと接するうちに、何か起こるんじゃないかと奇跡的なことを少し期待していたけれど、結局何も起こらなかった。

黒崎くんは仕事の覚えも早く、要領も良くて。
マニュアルさえ渡しておけば、わたしが居なくても特に問題無いように思えた。

ある意味、わたしの仕事って、その程度のものなのかもしれないけど。

「安西さん、これは何?」

データを検索していた黒崎くんが手を止めてわたしを見る。

「えっと……」

パソコンの画面を覗き込むと、有り得ない数値が表示されていた。

「あ、これ。たまにあるんだけど、基本の設定が間違ってて。この場合は、画面のコピーを貼り付けて、システムにメールするの」

「それ、どうやるの?」

「えっとね」

上半身を屈めてキーボードに手を伸ばすと、黒崎くんとの距離がグッと縮まった。

ドキドキする心臓を落ち着かせるように、小さく息を吐く。
仕事に集中しなきゃ。

「プリントスクリーンでコピーして、ペイントに貼り付けるの。それでね……」

一通り説明すると、黒崎くんがメモを取る。
クセのない読みやすい字。黒崎君の性格そのままみたい。

「一つ、賢くなった」

黒崎くんは嬉しそうに、わたしを見て微笑んだ。
その瞬間、心臓がドクンと跳ねる。

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