いつか晴れた日に
お願い。そんな無防備な表情、見せないで。
黒崎くんが涼だって、錯覚してしまいそう。
ドキドキと煩い心臓を押さえて、黒崎くんからそっと離れた。
一日の業務を終え、黒崎くんは週報を書いている。
手持ち無沙汰になったわたしは、机の上を片付けて時間を潰していた。
「来週からの予定は、どうなってるの?」
なんとなく口から出てきた言葉。
本当は、美香さんが担当することは知っているけれど、先に帰るのは悪いような気がして、話しかけてしまった。
「来週は佐藤さんが俺の教育係になるみたい。そう言えばさ、どうしてみんな佐藤さんのことを『美香さん』って呼ぶの?」
「あ……」
深く考えたこともなかったけど、確かに不思議に思うよね。
「前にね、ここの事務所に佐藤さんが三人も在籍していたらしいの。他の佐藤さんは、もうこちらには居ないんだけど、その名残りで、みんな『美香さん』って呼んでるんだって」
「へぇ。そうなんだ」
然程興味が無いように、黒崎くんが相槌を打つ。
そんな黒崎くんをぼんやり見詰めながら、今日が最後なんだと思うと少しだけ寂しくなった。
黒崎くんが涼だって、錯覚してしまいそう。
ドキドキと煩い心臓を押さえて、黒崎くんからそっと離れた。
一日の業務を終え、黒崎くんは週報を書いている。
手持ち無沙汰になったわたしは、机の上を片付けて時間を潰していた。
「来週からの予定は、どうなってるの?」
なんとなく口から出てきた言葉。
本当は、美香さんが担当することは知っているけれど、先に帰るのは悪いような気がして、話しかけてしまった。
「来週は佐藤さんが俺の教育係になるみたい。そう言えばさ、どうしてみんな佐藤さんのことを『美香さん』って呼ぶの?」
「あ……」
深く考えたこともなかったけど、確かに不思議に思うよね。
「前にね、ここの事務所に佐藤さんが三人も在籍していたらしいの。他の佐藤さんは、もうこちらには居ないんだけど、その名残りで、みんな『美香さん』って呼んでるんだって」
「へぇ。そうなんだ」
然程興味が無いように、黒崎くんが相槌を打つ。
そんな黒崎くんをぼんやり見詰めながら、今日が最後なんだと思うと少しだけ寂しくなった。