いつか晴れた日に
病院からの帰り道。
バスを降りて、二人並んでわたしのアパートまで歩いて帰る。

バッグを持つ指先が涼の手とぶつかると、涼はわたしの手をそっと包み込んだ。
まるで、恋人にするみたいな涼の仕草に、心臓がドクンと跳ねた。

思ったより逞しくて大きな手。
並んで歩くと背も高いし、当たり前なんだけど、涼も男の人なんだなと実感してしまう。

そうすると、今まで意識していなかった分、こうして二人でいることに妙に緊張したりして。

……あれ?
ちょっと待って。

これから一緒に暮らすのに、わたし、大丈夫なの?

そして、わたしは、重大なことに気付いてしまう。


……ど、どうしよう。

わたしの部屋にベッドは、一つしかないのだ。
やっぱり一緒に寝ることになるよね?

病み上がりの涼にフローリングに雑魚寝って訳にもいかない。
第一、わたしが涼の体調が心配だからと、来てもらうように言い出したのだ。

やっぱり、あの狭いベッドで二人で寝るしかないんだ。
想像すると、恥ずかしさから、歩き方がぎこちなくなってしまう。

そんなわたしの様子が余程可笑しかったのか、涼がわたしの顔を心配そうに覗き込んだ。

「怜奈ちゃん?」

「ひゃっ!!」

その距離が近すぎて、変な声が出てしまった。
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