いつか晴れた日に
だって

「なんだか、すみません。ご馳走になって、その上、家まで送ってもらうなんて。
池永さんの彼女に怒られちゃいますね」

そう、池永さんには結婚間近の彼女がいる。
だから、好きになっちゃダメなんだ。

自分自身を戒めるために言った言葉だった。
このまま、優しくされたら、憧れが恋に変わってしまいそう。

最初から終わりが見えている恋なんてしたくない。傷つくだけなんて、イヤだから。

そう、思っていたのに。


「俺に彼女がいるとか、気になる?」

「えっ?」

隣を歩く池永さんを見上げると、魅惑的な瞳がすっと細められて。
その視線に射抜かれるように、わたしは動けなくなってしまった。

「気になるんだ?」

「…………」

何も言えずにいると、それを肯定と受け取ったのか、池永さんは満足そうに微笑んだ。

「俺は気になるよ、安西さんのこと」

「そんな……」

「妹みたいで可愛いし」

そう言うと、わたしの頭をポンポンと叩いて駅に向かって歩いていく。



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