いつか晴れた日に


「怜奈ちゃん、おかえり」

なんと、アパートの前でわたしの帰りを待っているじゃないの。

カットソーとジーンズにスニーカー。
大学生みたいなラフな服装のこの男、手にはスーパーの袋を提げている。

一体何者なの?

「いい加減にしないと、本当に警察を呼ぶわよ」

一定の距離を保ちつつキッと睨むと、この男は相変わらずのふにゃりとした笑顔をわたしに向けた。

……気が抜ける。と言うか、この緊張感の無さは何だろう?


「怜奈ちゃん?」

「気安く名前で呼ばないで!」

ピシャリと言えば、泣きそうな顔をする。
これじゃ、わたしが意地悪をしているみたいじゃない。

  
「帰ってくれたら警察は呼ばない。だから、もう二度とここには来ないで」

「どうして?」

「……どうしてって。前にも言ったけど、わたしは貴方のこと知らないし。こんな風に一方的に家に来られても困るの」

「怜奈ちゃん、俺のこと覚えてないの?」

「だから、知らないって何度も言ってるでしょう?」

もう本当、いい加減にして欲しい。

アパートの前で押し問答をしていると、丁度お隣さんが帰ってきて、怪訝そうな顔で通り過ぎていった。

……あぁ、もう。変な噂がたったらどうしてくれるのよ。

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