いつか晴れた日に
「怜奈どうかしたの?」
お弁当の蓋を開けたまま、固まっているわたしを不思議そうに見詰める亜紀。
「じょ、女子力上げようかと思って、早起きして頑張ったんだ」
取り繕うようにそう言うと、亜紀は納得したように頷いて、それから何か思いついたみたいにニヤリと笑った。
「な、なに?」
「怜奈、好きな人でも出来たの?ね、誰?会社の人?」
亜紀の猫のような大きな瞳がキラキラと輝きだした。
「べ、別に、好きな人なんて……」
一瞬、池永さんの顔が頭を過ぎったけれど、それを全力で頭の外へ追い出した。
池永さんには彼女がいるんだし。
結婚間近なんて噂もあるのに、そんな池永さんに特別な感情を持ったって、どうしようもない。
話題を変えようと「今日の美香さんって、なんか機嫌悪くない?」と言うと、亜紀は同調するように大きく頷いた。
定時で会社を出て、管理会社に向かう。新しい鍵をもらうためだ。
手続きを終え、想定外の出費に涙目になりながら、アパートに戻る。
もしかして、部屋に入れなくて、外で待っていたりしないよね?
お願いだから、もう来ないで。そうじゃないと、わたし……