いつか晴れた日に

    
「お弁当美味しかった?」

「あ、うん。ありがとう」

「明日も期待しててね」

涼はそう言って、笑うけど。ね、ちょっと待ってよ。それって、今日も泊まるつもりなの?
はっきり言わなくちゃ。もうここには来ないでって。わかってくれないのなら、本当に警察に通報するしかない。

「涼、ちょっと話を聞いて」

「うん、何?」

涼はお箸をそっと置くと、黒い瞳でわたしを見詰める。その瞳は濡れていて潤んでいるようにも見える。


「もう、こんな真似はしないで。部屋にも勝手に入らないで」

「怜奈ちゃん……」

そんな悲しそうな顔をしてもダメよ。どう考えても、見知らぬ男を部屋に泊めるなんて可笑しなことなんだから。

「涼とはもう会わない」

そう告げると、涼は悲しそうに顔を歪めて、黙り込んでしまった。
何故だか胸が痛いけれど、彼氏でもない男をこれ以上部屋に上げるわけにはいかない。

「怜奈ちゃんは、俺との約束覚えてないの?」

「約束?」

記憶を辿るけれど、チビタと約束なんてした覚えは無い。第一、記憶の中のチビタは子犬なんだから、約束なんて出来るはずが無い。

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