いつか晴れた日に
ダメだよね、うん。絶対ダメだよ。
そう思いつつも、涼に作ってもらったお弁当を受け取って、一緒に家を出る。

「……涼は、どこに行くの?」

並んで歩きながら、わたしよりも背が高い涼を見上げる。
小さな紙袋を持った涼は少し考えるように瞬きをして、それから「図書館に」と言った。

「どうして、図書館?」

「ん。怜奈ちゃんが仕事に行っている間ヒマだから、色々と勉強をしようかなと思って」

「ふうん。そうなんだ」

「俺のこと、気になる?」

「ならない」

即答すると、涼は苦笑いを浮かべて「レシピもそこで調べてるんだ」と言った。


地下鉄の駅まで一緒に歩く。
交差点を渡ったところで、涼は「じゃ、怜奈ちゃん、いってらっしゃい」と手を振って、わたしとは逆の方向に歩いていった。

図書館に行くなら、地下鉄の方が早いのに……って、まだ開館してないよね?
ふと、気になって立ち止まり振り返った。

本当は、どこに行くつもりなの?

涼の身体は、今にも光に溶けてしまいそうにゆらゆらと揺れている。
色彩が淡く滲んでいく。

……涼が消えてしまう?

ちょっと、待って。勝手に居なくならないでよ。

「涼!」

気が付けば、名前を叫んでいた。



< 43 / 159 >

この作品をシェア

pagetop