いつか晴れた日に
「怜奈ちゃん、どうしたの?」
涼は振り向いて、チビタと同じ黒い瞳をわたしに向ける。
そんな真っ直ぐな瞳で見詰めないでよ。色々と思い出してしまうから。
一週間経ったら、涼は居なくなるんだよね?
涼は、それでもいいの?
わたしは、どうすればいいの?
考えたってわからない。
「き、気をつけてね」
少し離れた涼に聞こえるように大きな声を出した。
「うん。怜奈ちゃんもね!」
涼は嬉しそうに手を振って、そしてまた歩き出した。
今日は朝から慌しかった。
通常業務に加え、営業から回ってきた大量の受注票の入力、それから週末に控えたプレゼンの資料作りと、やることが盛り沢山。
こんな日に限って、問い合わせの電話が鳴り止まなくて、お昼休みに小会議室に逃げるように駆け込むと、テーブルの上に突っ伏して溜め息を吐いた。
「……つ、疲れた」
肩凝りのせいで気分が悪い。疲れすぎて、食欲も無くなってしまった。
隣に座った亜紀も、こめかみのまわりをマッサージしている。
「あ、電話まだ鳴ってる。もういい加減にして欲しいよね、昼休みなのに」
「この電話、うちの課かな?」