いつか晴れた日に

「いただきます」と二人一緒に手を合わせる。

涼とこうして食事をするのは、何回目になるのだろう。
すっかり胃袋を掴まれた感じ?

うん、好きな相手を落とすには、料理って重要かもしれない。そんなことを考えながら、から揚げを口に運ぶ。

「お局様がね、ちょっと意地悪でムカつくけど、会社はわりと楽しいかな。あ、そうそう、会社で友達が出来たんだ。同じ派遣社員の子なんだけどね」

「へぇ、友達?よかったね」

相槌をうって、涼がニコニコと笑っている。

「それでね」

気が付くと、美味しい料理につられて、わたしは今日の出来事を報告するように話し始めていた。

あぁ、これって。子供の頃と同じだ。涼といると、なんだか落ち着く。


「怜奈ちゃん」

「んーなに?」

から揚げを頬張りながら、適当に相槌をうつ。
一通り話し終えて満足すると、わたしは涼とのお喋りよりも、放送中のドラマに夢中になっていた。

「…………」

無言の涼が気になって、ふと視線を向けると、少し寂しそうに「明日は何が食べたい?」と曖昧に笑う。

わたしは取繕うように、少し考えたフリをして。

「えっとね、何がいいかなぁ。あぁ、でも今はちょっとわかんない」そう言うと、またテレビに意識を向けてしまった。

「そうだよね、じゃ、おまかせでいい?」

「うん、おまかせで」


……ああ、もっと。

このなんでもない日常を大切にするべきだったのに。


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