いつか晴れた日に
「あっ、ごめん。ちょっと、今日はダメかな」
今日は週末の金曜日。約束はしていなくても、毎週亜紀と居酒屋で飲むのが恒例だった。
なんだか、うしろめたくて、シドロモドロになってしまう。
そんなわたしが亜紀には具合が悪いように映るらしく、未だに心配顔でわたしの顔を覗き込んでいる。
「熱でもあるんじゃないの?」
「えっ?いや、大丈夫」
どうしよう。
本当のことを言いたいけれど、池永さんのことは、どう説明すればいいのかわからない。
結局は何も言えずに、池永さんと内緒で会うことになった。
仕事を終えて会社を出ると、時計はまだ六時を過ぎたところだった。
約束の時間まで、あと一時間。
それまで、ウインドーショッピングで時間を潰すことにした。
わたしが足を止めたのは、ファッションビルの中に一軒だけあるペットショップだった。
チビタは捨て犬だったから雑種だと思うけど、つい似ている子を探してしまう。
ふと、一番左のゲージで尻尾を振っている黒い子犬に目が止まった。
目がまん丸で短い毛。元気一杯に飛び跳ねたりして。可愛いなぁ。チビタもこんな感じだったよね。
「抱いてみます?」
つい食い入るように見入ってしまって、店員さんが近くにいることに、まるで気が付かなかった。
「抱けるんですか?」
「本当はダメですけど、特別にいいですよ。どうぞ」
ニッコリと微笑む店員さんに促されて店の中に入る。