いつか晴れた日に
池永さんの隣に並んで歩きながら、会社の人に見られたらどうしよう。なんて考えていた。

亜紀に嘘を吐いてしまったし。涼には連絡も出来なくて。
せっかく食事に誘ってもらったのに、なんだか後ろめたい気分になってしまった。

でも、どうして、わたしを誘ってくれたのだろう。
もしかして、ストーカー(涼のこと)を心配してくれているのかな?

この前も部屋まで送ってくれて。

誰かに心配してもらえるって、嬉しいものなんだ。
ずっと、彼氏もいなくて、そんな感覚もすっかり忘れていた。

「もうすぐだから」

「はい」

見上げた池永さんの笑顔が優しくて、何かを期待してしまいそうなる。
バカだな。そんなことがあるはずないのに。


池永さんが案内してくれたお店は、大通りから路地に入ったところにあった。

古い雑居ビルの地下。
ちょっと胡散臭い雰囲気の黄色い看板が印象的な居酒屋だった。

「ここ、安くて美味しいんだよ」

「居酒屋ですか?」

「そうそう」

池永さんに背中をそっと押されて、店の中に入る。
店内は活気がある店員さんの声と楽しそうな笑い声に溢れていた。
コの字型のカウンターも奥のテーブル席はすべて埋まっているみたい。

「一杯ですね」

「大丈夫」

近付いてきた店員さんに池永さんが名前を告げると、直ぐにカウンターの一番端の席に通された。
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