いつか晴れた日に
ぼんやりしているわたしを気遣うように、亜紀が話題を変えた。
「それにしても、今日も池永さん、素敵だよね。あのシルバーにドット柄のネクタイもお洒落。あれ、自分で選んだのかな?」
「どうだろうね」
適当に相槌をうって微笑んだ。
池永さんと金曜日にデートしたなんて、随分昔のことみたい。
キスをしたことも、信じられない。
好きだと、思っていたけれど。ただ、雰囲気に流されただけなのかな。
もし、今度食事に誘われたら、はっきり断ろう。二度と二人で会ったりしない。
「もう食べないの?」
「うん、なんだか食欲が無くて」
食べ掛けのサンドイッチを片付けたところで、事務所の電話が鳴り始めた。
「これ、うちの課かな?」
「うん、多分」
「電話に出ないと、また美香さんに叱られるね」
そう言って、席を立とうとした亜紀を手で制して「いいよ。わたしが電話取るから」と小会議室を後にした。
事務所に戻ると、誰も居ないと思っていたのに、池永さんが電話応対をしていた。
それ、うちの課の電話だよね?
他の営業さんは、みんな無視するのに。こういうところ、池永さんは素敵だと思う。
池永さんに近付いて、代わりましょうかと声に出さずに伝えるけれど。
メモを取っている池永さんは、わたしに目配せをして「担当の者が戻り次第連絡させます」と言って電話を切った。
「ありがとうございます」
「うん。別にいいよ。で、このメモ、担当の営業に渡してくれる?」
「はい」