いつか晴れた日に
メモを受け取るときに、指先が触れた。
と言うより、池永さんに手をギュっと握られてしまった。

その手は直ぐに離されたけど、わたしは驚いて立ち尽くしてしまう。

「……池永さん?」

「また今度、食事に行こうよ」

「あの」

はっきり言わなくちゃ。もう二度と、二人で逢わない。

それなのに……

pipipi,pipipi,pipipi

そこでタイミング悪く、池永さんの携帯が鳴り始めてしまって、結局、何も言うことは出来なかった。


アパートに帰って、電気が点いていない自分の部屋に落胆してしまう。
もう涼はいないとわかっているのに、もしかしたらと、思ってしまった。

コンビニのビニール袋をテーブルに置いて、部屋着に着替える。
何を食べても美味しくないし、食欲も湧かない。

買ってきたお弁当を広げてみたものの、手を付ける気にもならなくて。


涼に逢いたいよ。そう呟いて膝を抱える。


『怜奈ちゃんが泣くと俺も悲しい』

いつかの涼の言葉が、頭の中で聞こえたような気がした。
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