いつか晴れた日に
金曜日、亜紀を誘って洋風居酒屋に来ていた。
生ビールで乾杯して「お疲れ」と喉に流し込んでいく。


「あぁ、今日も忙しかったね」

「月末の締めがあるからね」

「美香さんの機嫌が悪いし」

「ホント、美香さん何なの、あの人」

亜紀が何かを思い出したように顔をしかめた。

愚痴を言い出すとキリがないけれど、たまには吐き出さないと、ストレスが溜まってしまう。
こうやって、気兼ねなく話せる友達は大切だなと実感する。


ほどよくお酒も進み、お腹も落ち着いた頃。

「ねぇ、亜紀」と話を切り出した。

「もしかして、彼氏が出来たの?」そう言うと、亜紀は驚いたように目を見開いた。

「な、なんで?」

「なんとなくだよ。最近、元気だし、毎日楽しそうだから」


亜紀の瞳を見詰めて返事を待つけれど、亜紀は困った様子で黙り込んでしまった。

……あれ?マズイこと訊いちゃったかな?


「話したくないなら、別にいいよ?ただ、なんとなくそう思っただけだから……」

「ううん、そうじゃなくて」

亜紀は「うーん」と少し考え込んで、「誰にも言わないでね」と念を押したあと、話し始めた。


「わたし、実は池永さんと付き合っているの」

「……え?」

今、池永さんって言ったよね?でも、どうして?
池永さんには彼女がいるんじゃないの?

「やだ、そんなにびっくりしないでよ」

唖然として言葉を失くすわたしに、亜紀は早口で言葉を続ける。

「黙ってて、ごめん。わたしもまだ、急なことで実感湧かないんだよね」
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